あなたの家のアンペアはいくつ?無駄に電気代高くなってませんか?
そもそもアンペアとは?電気料金との関係
「アンペア」という言葉、電気の請求書で見かけたことはあるものの、実際どういう意味か理解している方は意外と少ないものです。アンペアとは電流の単位で、一度に使える電気の量を表しています。
家庭に引き込める電気の容量を決めるのがこのアンペア数です。一般的な戸建て住宅やマンションでは、10A・15A・20A・30A・40A・50A・60Aの中から選択するようになっています(地域によって若干異なる場合があります)。
そして、このアンペア数は毎月の基本料金に直結しています。つまり、必要以上に高いアンペア数を契約していると、実際に使う電気の量に関係なく、基本料金という形で余分なお金を支払い続けていることになるのです。
電力会社の基本料金はアンペア数に比例して高くなります。例えば東京電力エリアの場合、10Aあたり約286円(税込)で、30Aなら月々858円、60Aなら1,716円の基本料金がかかります。必要以上に高いアンペア数を契約していると、年間で数千円〜1万円以上の無駄な出費になることも!
あなたは無駄なアンペア数で損をしているかも
多くの家庭では、引っ越し時に「とりあえず」と決めたアンペア数のまま何年も過ごしています。特に以下のようなケースでは、アンペア数の見直しで年間数千円〜1万円以上の節約が可能かもしれません:
- 新築購入時・引っ越し時にハウスメーカーや不動産会社の「推奨」でアンペア数を決めた
- 家族構成が変わった(子どもの独立など)
- 在宅時間が大きく変わった(リモートワークの増減など)
- 主要な家電を省エネタイプに買い替えた
- 一度もブレーカーが落ちたことがない
特に核家族世帯やシングル世帯で30A以上、一人暮らしで20A以上を契約している場合は、見直しの余地が大きいと言えます。
実際、筆者の知人は一人暮らしで40Aを契約していましたが、実際の使用状況を確認して20Aに下げたところ、年間9,000円以上の節約に成功しました。特に生活スタイルを変えることもなく、ブレーカーが落ちることもありません。
自宅のアンペア数のチェック方法
まずは自宅のアンペア数を確認しましょう。以下の方法でチェックできます:
方法1:検針票(電気料金の請求書)を確認する
最も簡単な方法は、毎月届く電気料金の請求書(検針票)を見ることです。「ご契約アンペア」「契約容量」などの欄に記載されています。スマートフォンのアプリや電力会社のWebサイトでの確認も可能です。
方法2:分電盤(ブレーカー)を確認する
自宅の分電盤(ブレーカーボックス)を見ると、主幹ブレーカーに数字が書かれています。「30」「40」などの表示がそのままアンペア数を表していることが多いです。ただし、分電盤の種類によっては「30A」「40A」と表示されている場合や、容量の単位が「kVA」で表示されているケースもあります。
※注意:マンションなど集合住宅では、各部屋ではなく建物全体で一括して契約している「一括受電」の場合があります。この場合、各部屋のブレーカーに表示される数値は建物内での制限値であり、契約アンペアとは異なります。
適切なアンペア数の計算方法
では、自分の家に最適なアンペア数をどう計算すれば良いのでしょうか?基本的には「同時に使用する可能性のある家電の消費電力の合計」から算出します。
簡易計算式
適切なアンペア数は以下の式で計算できます:
計算式
必要なアンペア数 = 同時に使用する家電の消費電力(W)÷ 100(V)
※日本の一般家庭の電圧は100Vです
例えば、エアコン(1,500W)、冷蔵庫(150W)、テレビ(150W)、照明器具(100W×5個=500W)、電子レンジ(1,200W)を同時に使用する場合:
計算例
1,500W + 150W + 150W + 500W + 1,200W = 3,500W
3,500W ÷ 100V = 35A
→ 40Aの契約が必要
ただし、これはあくまで理論値です。実際には、すべての家電が常に最大出力で稼働しているわけではありません。特にエアコンや冷蔵庫は、設定温度に達すると消費電力が低下します。また、IHクッキングヒーターや電子レンジなど、短時間しか使わない家電もあります。
より現実的な計算方法
より実用的なのは、「実際に使っている家電の組み合わせでブレーカーが落ちるかどうか」をテストする方法です。普段の生活で一度もブレーカーが落ちない場合は、現在のアンペア数より低い契約でも問題ない可能性が高いです。
家族構成 | 一般的な目安 | 備考 |
---|---|---|
一人暮らし | 10〜20A | エアコンとIH使用なら20A程度 |
二人暮らし | 20〜30A | 同時に別々の部屋でエアコン使用なら30A |
三人以上 | 30〜40A | 電気温水器やIHがある場合は40A〜 |
大家族(5人以上) | 40〜60A | オール電化の場合は50〜60A |
実例で見る!アンペア見直しによる節約効果
ここでは、実際にアンペア数を見直した家庭の例をご紹介します。
東京都在住、30代男性。一人暮らしで40Aを契約していたが、電力使用状況を記録した結果、最大でも20A程度しか使用していないことが判明。契約を20Aに変更し、基本料金が月々570円、年間6,840円の節約に成功。
大阪府在住、40代夫婦と中学生の子供1人。50Aで契約していたが、子供の塾通いで家族が全員揃う時間が減ったことを機に見直し。30Aに下げても特に不便なく、年間約9,600円の節約となった。
「ちょっと多めに契約しておけば安心」という考えが、知らず知らずのうちに家計の負担になっているケースは少なくありません。特に新築時にハウスメーカーの「推奨」で決めたアンペア数は、余裕を見すぎている場合が多いです。
アンペア数を変更する手順と注意点
アンペア数の変更は意外と簡単です。主に以下の方法があります:
電力会社に連絡する方法
- 契約している電力会社のカスタマーセンターに電話
- 電力会社のWebサイトやアプリから申請
多くの場合、申請から数日〜1週間程度で変更完了します。現在の契約アンペア数によっては、電力会社の係員が自宅に来て分電盤の工事を行う必要がある場合もあります。
※注意:一部の新電力(新しく参入してきた電力会社)では、アンペア制ではなく、1kVAあたりの基本料金制を採用しているケースがあります。この場合、アンペア数の変更という概念がないため、プラン変更での対応となります。
注意点
アンペア数を下げる際の注意点をいくつか挙げておきます:
- 急に下げすぎるとブレーカーが頻繁に落ちる可能性がある(例:60A→20Aなど)
- 季節によって電力使用量が変わるため、年間を通しての最大使用量を考慮する
- 冬季と夏季はエアコン使用で電力消費が増えるため、余裕を持たせる
- 将来的な家電の買い替え予定(特に大型家電)を考慮する
- 一度下げた後に上げる場合、再度手数料がかかる場合がある
基本的には、「少し下げてみて様子を見る」という段階的なアプローチが安全です。例えば、現在40Aなら、まずは30Aに下げてみて、数ヶ月様子を見るという方法がおすすめです。
季節ごとのアンペア調整のすすめ
実は、季節に合わせてアンペア数を変更するという上級テクニックも存在します。電力使用量は季節によって大きく変動するからです。
季節別の電力使用傾向
季節 | 電力使用の特徴 | 推奨アンペア調整 |
---|---|---|
夏季(7〜9月) | エアコン使用で電力消費増 | 通常より+10A程度 |
冬季(12〜2月) | 暖房機器使用で電力消費増 | 通常より+5〜10A程度 |
春・秋(3〜6月、10〜11月) | 比較的電力消費少 | 最低限のアンペア数 |
例えば、一年を通じて40Aで契約している家庭が、春と秋の6ヶ月間だけ30Aに下げると、年間約3,000円以上の節約になります。ただし、毎回の変更手続きの手間を考えると、頻繁な変更は現実的ではないかもしれません。
現実的な対応としては、年間で最も電力を使用する夏場でも問題ない最低限のアンペア数を選ぶことが、手間と節約のバランスが取れた方法と言えるでしょう。
ブレーカーが落ちる原因と対策
アンペア数を下げた後に懸念されるのが「ブレーカーが頻繁に落ちるのでは?」という点です。実際にブレーカーが落ちる主な原因と対策を確認しておきましょう。
ブレーカーが落ちる主な原因
- 契約アンペアを超える電力を使用した(最も一般的な原因)
- 特定の回路に負荷が集中している(漏電遮断器が作動)
- 家電の故障による異常電流
- 配線の劣化による漏電
ブレーカーが落ちないための対策
アンペア数を下げても、以下の対策でブレーカーが落ちるリスクを軽減できます:
- 消費電力の大きな家電(エアコン、電子レンジ、ドライヤーなど)の同時使用を避ける
- 時間帯をずらして使用する(例:洗濯機の稼働時間帯はエアコンの設定温度を控えめにするなど)
- 家電製品の省エネモードを活用する
- 使っていない家電はコンセントから抜く(待機電力の削減)
- 照明をLEDに変更する(消費電力が大幅に減少)
特に、電子レンジやドライヤーなど、短時間だけ大きな電力を消費する家電の使用タイミングを工夫するだけで、かなりブレーカーが落ちるリスクを減らせます。
家電の消費電力を知って上手に電気を使う方法
効率的な電力利用のためには、主要家電の消費電力を把握しておくことが重要です。以下は一般的な家電の消費電力の目安です:
家電 | 平均消費電力 | 注意点 |
---|---|---|
エアコン | 700〜1,500W | 起動時は一時的に2,000W近くになることも |
電子レンジ | 900〜1,500W | 短時間の使用だが消費電力は大きい |
ドライヤー | 1,000〜1,200W | 「強」で使用すると消費電力大 |
IHクッキングヒーター | 1,000〜3,000W | 複数口同時使用で最大6,000Wに |
冷蔵庫 | 150〜300W | 常時稼働だが、サイクル運転のため平均は低め |
LED照明 | 5〜15W | 蛍光灯の1/3〜1/5の消費電力 |
テレビ | 100〜300W | サイズによって大きく異なる |
洗濯機 | 300〜500W | 脱水時は一時的に消費電力上昇 |
最近の家電は省エネ性能が大幅に向上しています。10年以上前の家電を使っている場合、新しい省エネ家電に買い替えるだけでも、消費電力が30〜50%削減されるケースも珍しくありません。特に冷蔵庫やエアコンなど、常時または長時間使用する家電の省エネ効果は大きいです。
エアコンは設定温度を夏は1℃高く、冬は1℃低く設定するだけで、約10%の電力削減効果があります。また、フィルターの定期的な清掃も省エネにつながります。
まとめ:最適なアンペア設定で賢く節約
ここまで見てきたように、アンペア数の見直しは、生活スタイルを変えることなく実現できる効果的な節約方法です。特に以下のポイントを覚えておきましょう:
- アンペア数は基本料金に直結しており、過剰な契約は無駄な出費につながる
- 一般的な家庭では、同時に使用する家電の組み合わせを工夫するだけでアンペア数を下げられることが多い
- アンペア数の変更は電力会社に連絡するだけで比較的簡単に行える
- 段階的に下げていくアプローチが安全(例:40A→30A→20A)
- 省エネ家電への買い替えや使用方法の工夫で、さらに電力消費を抑えられる
この機会に、ぜひご自宅のアンペア数を見直してみてはいかがでしょうか。ちょっとした確認と変更で、年間数千円〜1万円以上の節約が可能かもしれません。そして、その節約分を家族との楽しい時間や将来への投資に回せば、より豊かな生活につながるはずです。
電気料金の見直しは、アンペア数だけでなく、電力会社やプランの選択も重要なポイントです。自分のライフスタイルに合った最適な選択で、無駄なく快適な電気の使い方を実現しましょう。